【英語で徳育】スマイルズ「品正論」その1

こんにちは、塾長です。

 

サミュエル・スマイルズといえば、「Self Help 自助論(西国立志編)」として有名ですね。

 

明治維新後、開国間もない日本で、福沢諭吉の「学問のすすめ」と並んで若者の間で飛ぶように売れた本です。

 

(明治時代の文章そのものはこちら↓。塾長はこちらが大好き。読んでいて「頑張ろう!という気になります」)

西国立志編 (講談社学術文庫)

西国立志編 (講談社学術文庫)

 

 

 (古い日本語は苦手、というかたはこちら↓)

  

Self-Help

Self-Help

  • 作者:Smiles, Samuel
  • 発売日: 2019/02/22
  • メディア: ペーパーバック
 

 

これは全人類必読の歴史的名著で、将来的にこちらも解説していきたいと思っています。

 

今回は、サミュエル・スマイルズのもう一つの歴史的名著、「Character 品正論」を精読していきたいと思います。

 

こういう、英語力とか学力だけでなくて、人格が高まるような英語教材を学校でなぜ採用しないのか、塾長は不思議でなりません。

 

「実践的な英語力を!」と息巻いて、リスニングとかスピーキングに力を入れるよりも、よほど大事だと思うのですが…

 

まあ、だから「自分でやるしかないか」と思って、YouTubeやブログを始めたんですけどね。

 

Character

Character

  • 作者:Smiles, Samuel
  • 発売日: 2017/02/23
  • メディア: ペーパーバック
 

 

もうひとつ、読み進むと分かってきますが、この本は大学受験の頻出英単語のオンパレードで、英語中級者の学習に最高なんです。

 

さて、この本は日本では「向上心」という邦題の方がメジャーですが、ここで使う日本語訳は、

「日本の古本屋」

https://www.kosho.or.jp/

で見つけた、1907年刊行、竹村修(たけむら・おさむ)訳の「品正論」を使います。これは完全に塾長の好みの問題です。

 

(現代語訳で読みたい方はこちら↓)

向上心: 自分の人生に種を蒔け! (単行本)
 

 

刊行された年代のため、日本語訳自体が漢文のようですが、英語と一緒に漢文も勉強するつもりで読んでしまいましょう!

 

それでは、やっていきたいと思います。

 

 Character is one of the greatest motive powers in the world. In its noblest embodiments, it exemplifies human nature in its highest forms, for it exhibits man at its best.

 

★motive powerは「動機、原動力」です。motivationと同じような意味の語句ですね。

★embodimentは「体現、具現化」です。bodyに動詞化を表す接頭辞enがくっついた単語です。enjoyのenと同じですね。

★exemplifyは「好例となる、例証する」です。for exampleのexampleの親戚の単語です。

★このforは前置詞ではなく、「というのは、~だからである」と訳す接続詞です。大学入試にも超頻出ですね。

★at one's bestは「最高の状態で、最善で」 です。これも入試頻出です。

 

それではもう一度、英語の本文と竹村修(おさむ)による漢文風の和訳、それから現代語訳を読んでみますね。

 

 Character is one of the greatest motive powers in the world. In its noblest embodiments, it exemplifies human nature in its highest forms, for it exhibits man at its best.

【竹村訳】

品性は世界に於(お)ける最大原動力の一なり。其の最も高尚に権化(ごんげ)する所、人性(じんせい)を其の最も崇高なる形に於いて例証す。蓋(けだ)し人を人の人たる至善(しいぜん)の域に於いて顕(あらわ)せばなり。

【塾長による現代語訳】

 人格こそはこの世で最大の原動力の一つである。人格が最も高貴に体現されるとき、それは人間の性質を最も崇高な形に表すものとなる。なぜなら、人格こそ人間の価値を表す最も大切なものだからである。

 

いかがでしょうか?

先ほど本書は大学受験の頻出英単語のオンパレード、と表現しましたが、納得してもらえましたでしょうか?

 

これだけだとちょっともの足りないので、もう1段落読んでみましょう。

 

Men of genuine excellence, in every situation of life, —men of industry, of integrity, of high principle, of sterling honesty of purpose— command the spontaneous homage of mankind. It is natural to believe in such men, to have confidence in them, and to imitate them. All that is good is in the world is upheld by them, and without their presence in it the world would not be worth living in. 

 

★genuineは「本物の」、excellenceは「卓越、素晴らしさ」です。

★industryは「産業」という意味もありますが、この場合は「勤勉」です。派生語のindustrialは「産業の」、industriousは「勤勉な」は入試頻出の知識ですね。

★integrityは「高潔さ、人格の高さ」です。数学の積分記号を「インテグラル」と言いますよね。人格において理想的な要素が集まってる、という感覚で覚えるといいと思います。

★principleは「理念、原理、原則」です。全く同じ発音で綴りが少し違うprincipalは形容詞で「大切な」、名詞で「校長」ですから、ひとつづつ覚えなければいけないのですが、語源的には同じと考えていいです。

★sterlingは「純粋な、立派な」です。

sterlingには「英国貨幣の」という意味もありますが、もともとsterlingはstarの仲間で、「星のようにキラキラと輝かしい」ということから「純粋な、立派な」という意味になりました。今もそうなのか分かりませんが、昔イギリスの銀貨に小さな星が刻印されたことから、「英国貨幣の」という意味になったそうです。

★spontaneousは「自発的な、自然な」です。spin「スピン」とか、sponsor 「後援する、スポンサー」とかと語源は同じです。力がぐるぐると出てくる感じでしょうかね。

★homageは「尊敬」です。語源的にはhumanと同じですが、この場合は語源の知識があまり記憶の役に立ちませんね。 

★It is 形容詞 to 動詞の原形、の形になっています。典型的な形式主語の構文ですね。

★confidenceは「自信」です。

confidential「機密の」という単語も派生語で、「信頼の厚い」→「この人になら打ち明けてもいいこと」という意味で、「機密の」という意味になりました。

よく海外ドラマや映画で書類に「confidential」と判が押されているのを見ますよね。「社外秘」とか「機密事項」という意味です。

★imitateは「真似する」です。宝石や金の「イミテーション」は、「本物の真似をしたもの」という意味ですね。

★All that is goodまでが主部です。このthatはAllを先行詞とする関係代名詞です。

★without their presence in it が副詞の挿入になっています。このitはthe worldを指しますね。

★Without A, B would ~. の形ですから、このwouldは仮定法です。高校英語で習う、「If節のない仮定法」というやつですね。

★be worth ~ingも入試頻出の表現ですね。liveが自動詞なので前置詞inが必要なこともポイントです。

※This book is worth reading.

→You should read this book. (read は他動詞)

This world is not worth living in.

→I don't want to live in this world. (liveは自動詞)

 

ではもう一度本文と読んだ後、訳を見てみましょう。

 

Men of genuine excellence, in every situation of life, —men of industry, of integrity, of high principle, of sterling honesty of purpose— command the spontaneous homage of mankind. It is natural to believe in such men, to have confidence in them, and to imitate them. All that is good is in the world is upheld by them, and without their presence in it the world would not be worth living in.

 【竹村訳】

真に個に卓越せる人は、如何(いか)なる地位にある人も——例えば、勤勉なる人、清廉なる人、主義の高き人、意志の純潔なる人は——自然に人をして尊敬の心を起こさしむ。吾人(ごじん)が、斯(か)くの如(ごと)き人に信頼し、帰服し、模倣する所あらんとするは、固(もと)より当然なり。世界の一切の善は、彼らに依(よ)りて維持せらる。若(も)し彼ら無ければ、此(こ)の世は吾人の生存に値(あたい)せざる可(べ)し。

【塾長による現代語訳】

 世の中のどんな地位にある人でも、本当に優れた人——勤勉な人、高潔な人、高尚な理念を持つ人、純粋で立派な目標を持っている人——は、すべての人から自然と尊敬を受けるものだ。そういう人たちを信じ、誇りに思い、真似しようと考えるのは自然なことである。この世界のすべての善なるものは、こうした真に優れた人々によってなされたものであり、彼らの存在がなければ、この世は生きるに値しないものとなってしまうだろう。

 

お疲れさまでした!

最後までご覧いただき、誠にありがとうございました!!