【英語で論語】学而第一・その五 孔子流 “国の治め方”

皆さん、こんにちは。天神会の塾長です。

 

本日は英語で論語、学而(がくじ)第一の五を解説していきます。 

 

論語の英訳がスラスラ暗唱できるようになれば、大学受験レベルの英作文はバッチリですし、スピーキングにも役立つこと請け合いです。

 

和訳の際に書き下し文まで覚えれば、漢文の勉強までできて、一石二鳥ですね。

  

ちなみに、論語(英語ではThe Analects)は全部で20章からなっていて、それぞれの章の最初の文の、「子曰く」(し・いわく)の次の2文字と、その章の通し番号を組み合わせた名前で各章を呼ぶのが通例になっていますよ。

 

Ex.

1章:子曰、学而時習之、不亦説乎。…→ 学而第一(この章の呼び方)

第2章:子曰、為政以徳、…→ 為政第二(この章の呼び方))

 

それでは、まず塾長が使っているペンギン版の英訳を読んでいきます。

 

The Analects (Classics) (English Edition)

The Analects (Classics) (English Edition)

 

 

最初はゆっくり、その次に少し早めに、合わせて2回読みますので、内容を考えながら、できれば私と一緒に、声に出して読んでみてくださいね。

 

※音読は最強の英語勉強法です!

 

それでは、いってみましょう!

 

論語 学而(がくじ)第一・五

 

【英訳】

The Master said, ‘In guiding a state of a thousand chariots, approach your duties with reverence and be trustworthy in what you say; avoid excesses in expenditure and love your fellow men; employ the labour of the common people only in the right seasons.’

 

どうでしょうか?もう一度いきますね。

 

The Master said, ‘In guiding a state of a thousand chariots, approach your duties with reverence and be trustworthy in what you say; avoid excesses in expenditure and love your fellow men; employ the labour of the common people only in the right seasons.’

 

それでは、解説を加えていきたいと思います。

 

 論語になじみのある方はお分かりの通り、論語は弟子が書き記した孔子の言行録の形をとっています。

The MasterMが大文字になっているのは、自分たちの先生である孔子という特定の師を指すからですね。

キリスト教に関係した英文で、文中なのにHeHが大文字になっているときは、神様あるいはキリストのことを指す、っていうのと同じですよ。

 

 

★The Master said, ‘In guiding a state of a thousand chariots, approach your duties with reverence and be trustworthy in what you say; avoid excesses in expenditure and love your fellow men; employ the labour of the common people only in the right seasons.’

 

 In guiding a state of a thousand chariots, の部分は、In+(プラス)動名詞の形で、全体で副詞句ですね。

 

in+動名詞:~することにおいて、~するときに

 

statethe United States of Americastateと一緒ですが、この場合は「州」ではなくて「国」と訳しましょう。

chariotcarと同語源の単語で、「馬車」のことです。

漫画「ジョジョの奇妙な冒険」に、シルバーチャリオットっていうキャラクターが出てきますから、知っている人も多いかもしれませんね。

この部分の直訳は、「千の馬車の国を導くことにおいて」、少しわかりやすく意訳すると、「強大な軍事力を持つ大きな国を治める場合は」くらいの訳になりますね。

 

 続く部分ですが命令文が3つ、セミコロンでつながっています。まずapproach your duties with reverence and be trustworthy in what you say です。

 

★The Master said, ‘In guiding a state of a thousand chariots, approach your duties with reverence and be trustworthy in what you say; avoid excesses in expenditure and love your fellow men; employ the labour of the common people only in the right seasons.’

 

approach Aは「Aに接近する」「Aに取り組む」ですが、今回は「取り組む」の方ですね。

approachは自動詞ではなく他動詞なので、approach to Aとすると誤りですから注意してください。

 

× approach to A  approach A

 

これは文法問題でよく出題されますね。ただし、名詞で「Aへの取り組み」という意味で使う場合には、an approach to Aになりますので、混乱しないようにしましょう!

 

(an) approach to A  Aへの取り組み 

 

yourジェネリック・ユー、いわゆる「一般論のyouですから、「あなたの」ではなく、「自分の」という風に考えましょう。

 

Generic you:一般論のyou

 

dutiesは「義務」ですが、この場合は「責務」くらいにとらえた方が、雰囲気が出ますね。

 

duty/duties 義務、責務

 

reverenceは見たようで見たことがない、という方が多いと思いますが、英検1級レベルの単語です。

「崇敬」とか「敬愛」といった意味ですが、「崇敬する」っていう意味のrevereという動詞の名詞形ですね。

語源的な話をすると、reは強意、vereawareとかのwareと同じ系統で、「見る」とか「意識する」っていう意味です。「誰か、または何かのことを、敬愛の心をもって強く意識する」くらいのイメージでしょうね。

 

revere : re(強意)+vere(見る、意識する ※awareなどのwareと同系統)

敬愛をもって強く意識する→崇敬する

 

vereのvとwareのwは、おなじみ、グリムの法則で入れ替わってますね。

 

グリムの法則…欧米人にとって発音が似ている文字は、どんどん入れ替わっていく法則、ぐらいの理解でOK

 

というわけで、approach your duties with reverence の部分をまとめると「自分の責務に敬愛をもって取り組みなさい」くらいの訳になります。

 

approach your duties with reverence:「自分の責務に敬愛をもって取り組みなさい」

 

★The Master said, ‘In guiding a state of a thousand chariots, approach your duties with reverence and be trustworthy in what you say; avoid excesses in expenditure and love your fellow men; employ the labour of the common people only in the right seasons.’

 

trustworthyは「信頼できる」ですが、trust「信頼」と、be worthy of ~ingworthyの合体ですから、わかりやすいですね。

 

in what you sayは前置詞プラス、いわゆる「疑問詞が導く名詞節」(下テロップ:前置詞in+疑問師が導く名詞節what you say)の形をしていますね。

 

このyouも「一般論のyou」と考えていいですから、be trustworthy in what you sayは、「自分がやることにおいて信頼されるようにしなさい」くらいの訳になります。

 

★The Master said, ‘In guiding a state of a thousand chariots, approach your duties with reverence and be trustworthy in what you say; avoid excesses in expenditure and love your fellow men; employ the labour of the common people only in the right seasons.’

 

 続いて、avoid excesses in expenditure and love your fellow men のところです。

avoid excesses in expenditureの直訳は「費用における過剰を避けなさい」となります。「無駄な経費を使うな」ということですね。

 

avoid:避ける excess:過剰、超過 expenditure:支出、費用、経費

 

expenditureはちょっと難しい単語ですが、大学入試でもよく出てきます。

exは「外」を意味する接頭辞、※接頭辞…単語の前につくもの)

pendのところはspendと同じで「お金、時間を使う」、

tureadventuretureで名詞にする働きの接尾辞(※接尾辞…単語の後ろにつくもの)

ですから、「外に向けて使うお金」だと考えれば良いですね。

 

expenditureex()+pend(使う)+ture(名詞化)

外にむけて使うお金→費用、支出、経費

 

love your fellow menは、「自分の仲間を愛しなさい」くらいの訳になります。

 

avoid excesses in expenditure and love your fellow men

→余計な経費を避け、仲間を愛しなさい

 

The Master said, ‘In guiding a state of a thousand chariots, approach your duties with reverence and be trustworthy in what you say; avoid excesses in expenditure and love your fellow men; employ the labour of the common people only in the right seasons.’

 

 最後に、employ the labour of the common people only in the right seasonsです。

 

labourは「労働」ですね。labourはイギリス綴り、uのないlaborはアメリカ綴りで、どちらの綴りでも構いません。 

 

この部分の直訳は「正しい季節にだけ、一般の人々の労働(力)を雇いなさい」、

意訳は「民を国事に使役するときは、時期をよく考えなさい」くらいになり、それほど難しい英文ではないように思いますが、補足を2点ほど…

 

まず中国古典に関して塾長が一番好きな宇野哲人(うの・てつと)先生の解説によると、only in the right seasons は「人々が農業に従事しなければいけない季節は避けろ」という意味だそうです!

 

論語新釈 (講談社学術文庫)

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  • 作者:宇野 哲人
  • 発売日: 1980/01/08
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2つ目、ここはthe の使い方が学べる英文になっています。

 

★Employ the labour of the common people only in the right seasons.

 

赤字のthe青字のtheは文法的に少し違うものです。

 

入試問題の英作文では青字のtheを忘れても減点されることはまずありませんが、赤字のtheを抜かしてしまうと減点対象になります。

 

では、順番に見ていきます。

 

赤字、青字両方とも、theは「特定の、決まった」というイメージは共通しています。

 

最初の赤字のtheは、

the A of B

の形になっています。

「ただの」Aではなくて、BのAという情報が後ろから「A」を修飾(限定)していますから、このAは「特定のA」ということになり、Aの前にtheをつける必要があります。

 

さて次の青字のtheですが、

I went to the zoo yesterday.

とか、

He plays the piano very well.

とかのtheと同じような感覚のtheになります。

上記の用例は「代表単数のthe」なんて言ったりしますね。

 

この論語の英訳の場合も、ただ漠然と「一般の人々」「いい季節」といった感覚でcommon people、right seasonsと言っているのではなく、

 

「例の、あの」といった感覚を多少なりとも頭に浮かべてthe common people、the right seasonsと言っている、ということが理解できればOKです。

 

この青字のtheを使いこなすのは少し難しいかもしれませんが、だんだん慣れてきますよ!

 

 では、最後に、英訳と白文、書き下し文、現代語訳をまとめておきますね。暗唱できるように頑張りましょう!

 

【英訳】

The Master said, ‘In guiding a state of a thousand chariots, approach your duties with reverence and be trustworthy in what you say; avoid excesses in expenditure and love your fellow men; employ the labour of the common people only in the right seasons.’

 

【白文】

子曰、道千乗之國、敬事而信。節用而愛人、使民以時。

 

【書き下し文】

子曰はく、千乗の国を道むるに、事を敬して信。用を節して人を愛し、民を使ふに時を以てす。

 

【フリガナ有】

子(し)曰(い)はく、千乗(せんじょう)の国を道(おさ)むるに、事(こと)を敬(けい)して信(しん)。用(よう)を節(せっ)して人を愛し、民(たみ)を使ふ(つかう)に時(とき)を以て(もって)す。

 

【平仮名】

し・いわく、せんじょうのくにをおさむるに、ことをけいしてしん。ようをせっしてひとをあいし、たみをつかうにときをもってす。

 

宇野哲人先生による解釈】

兵車(へいしゃ)千乗(せんじょう)を出すことの出来るほどの大諸侯(だいしょこう)の国を治めるには、国事を慎重に取り扱い、命令賞罰等終始一(いつ)のごとくにし、無駄の費用を節約し、国人(こくじん)に恩恵を施(ほどこ)し、国事に民を使役する場合には農業の妨害のならない時にする。この五箇条は治国(ちこく)の大本(たいほん)である。

 

 

 最後までご覧いただき、誠にありがとうございました!

 

※最後に、小説風に論語を解説したの塾長イチオシの本はこちら↓。

次郎物語」(これもメッチャ面白いです)で有名な下村湖人(しもむら・こじん)先生の本です。ご家族みんなで読んでほしいです。

 

論語物語 (講談社学術文庫)

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  • 作者:下村 湖人
  • 発売日: 1981/04/08
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※大学生、社会人は大人の教養としてこの本も読んでおきましょう↓。

日本の経済を作った人と言ってもいい財界の巨人・渋沢栄一の本です。全ビジネスマン必読の著です。

 

現代語訳 論語と算盤 (ちくま新書)

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  • 作者:渋沢 栄一
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